学内広報 No.808 ’88.11.22
本郷記念館(仮称)の運営について 東京大学本郷記念館(仮称)の管理運営に関する準備会 |
東京大学創立百年記念行事の一環として同事業後援会の手で建設中の本郷記念館(仮称)は、いよいよ明年2月に完成の運びとなった。完成後は、同事業後援会から本学に寄付され、本学がその管理運営の任に当たることになっている。 本年4月評議会の議を経て設置された「東京大学本郷記念館(仮称)の管理運営に関する準備会」では、この記念館を、充実した総合的スポーツセンターとし て、一般学生、教職員の健康維持と運動部の競技力向上という、その建設の趣旨を十分に活かして運営すべく、管理運営のありかたについて鋭意検討を行ってき たが、このほどこれに関する二つの規則(「東京大学御殿下記念館規則」「東京大学御殿下記念館運営委員会規則」)と運営方針の大綱について成案を得た。 上記規則(案)が評議会(11月22日)に提案されたので、これを機会に記念館の施設・設備の概要やその特色を紹介し、また運営方針の大略を公表して、 学内の理解を得たいと考える。われわれは、建設的な意見が寄せられることを期待しており、学生課あて文書で寄せられることを歓迎する。 運営の基本方針 本学の学生、教職員の健康保持・増進を図るため、各種機能を備えた総合的なスポーツセンターとして、できるだけ行き届いたサービスを提供することを以って、運営の基本方針とする。 記念館は、人工芝化によって装いも新たな御殿下グラウンドと一体となって「総合スポーツ・コンプレックス」を構成し、少人数に独占されることなく、広く 大学人が自由に思い思いのスポーツを楽しみ、汗を流し、そしてそのあと、シャワーを浴びサウナに入り、喉を潤しつつスポーツの醍醐味を語りあって、豊かな 人間関係を築きあげていくための場として、適切に運営されなければならない。 それ故、運営に当たっては、国立大学の同種施設について、これまで常識とされてきた水準にこだわることなく、高い水準を求めて行く。 具体的には、施設・設備を十分に活かし、その機能を100%発揮させるような組織的、財政的体制を整えることが肝心である。これによって利用者の便を図るための夜間・休日の開館、行き届いた講習・設備の整備・清掃、各種スポーツの講習・指導等も図られる。 また、多忙な中を余暇をみつけた人が、個人として随時利用できるような、最大多数の利益を図る、肌理の細かい運営にも心掛けてゆきたい。 利用方法 (1)開館日・時間 とくに支障がない限り、年末・年始を除く毎日、午前11時30分から午後8時30分までの間、開館するものとする。ただし、日曜日、祝日については、当分の間、団体等による独占的利用(後述参照)に限り、開館時間についても別の定めとする。 (2)利用者の範囲 原則として、本学の学生、生徒、教職員および記念館で開催される行事、スポーツ大会・研修会に参加する者とする。 (3)利用形態 上述したような運営の基本方針に従い、前項にあげた利用資格者が、ジムナジアム、プール、トレーニング室等を個人として随時利用するのを原則とする。 しかし、この原則を妨げない限りで、学内の諸団体が、一定時間これらの施設のいずれかを独占的に利用できる時間帯を週日にも設定して、予約を受付けるも のとする。詳細は未定であるが、いずれにしても昼休みについては、独占的利用は一切排除し、一般学生、教職員の個人的利用の便を優先させる。 運営経費とその財源 上述の基本方針に基づき、この立派な施設を運営し充分に活用していくためには、それなりの経費が必要なことは、いうまでもない。われわれの試算でが、この運営に当たる国の定員の人件費を除いても、年間7,600万円を下らないと予想されている。 もとより、こうした運営によって記念館が質の高いサービスを提供することは、学生、教職員の健康を増進し、ひいては大学全体の活性化につながると考えら れるから、本来、運営経費の基本的部分は大学(国)の予算によって賄われることが望ましい。実際、本学としても、校費による相当な支出を予定しなければな らないであろう。 しかしながら、現状において大学が経費の全額を負担することは、必ずしも適当とは思われない。この種の施設について国が認めている現在の水準を超えるも のを、全額国費負担で利用できるとするのは、いま直ちに納税者の納得を得られるものではない。また、大学の予算といっても、?国からこのために特別の予算 が期待できない状況のものでは?結局は研究教育の予算の一部を割く以外にないのであるから、大学の支出できる額にもおのずから限度がある。 こうしてわれわれは、運営経費の一部分については、利用者の負担を求めるのが筋であると結論するにいたった。もちろん、利用者の立場としては、無料で利 用できるに越したことはあるまい。また、われわれも、この程度のスポーツ施設を無料で全国民が利用できるよう福利厚生基準の向上を望むものであるが、遺憾 ながら現状はそこから大きく隔たっている。当面(国の水準が高められるまでの間)、利用者(受益者)もまた応分の負担をすることによって、国とともに、こ の立派な記念館を育てていく責務を果たすことが望まれる。 この場合、また、想起しなければならないのは、この記念館が、先輩をはじめ関係各方面の寄付金によって建てられた、という事実である。国の基準を超える 総合的スポーツ施設を学生、教職員のために建設することが本学の発展のために貢献する、と判断された記念事業関係者の英知と厚意に尊敬と感謝の念を抱きつ つ、この自然の気持から、こうして与えられた誇るべき記念館を立派に育成し、次の世代に引き渡していくために応分の協力を果たすことについて、利用者の理 解を得ることは困難ではない、とわれわれは確信する。 いうまでもなく、将来、国の基準が引上げられ、記念館の維持費が全額国の予算で賄われる時代が来るならば、それは、記念事業の先見性が証明され、国(大 学)、先輩(寄付者)、利用者(受益者)が協力して高水準のスポーツ施設を盛り立てるという、われわれの提唱する体制が、歴史的使命を果たし終えたことを 意味している。われわれは、このようにして善意の協力に関する利用者のコンセンサスが、本記念館並みのスポーツ施設を国立大学に設置することについての、 国民(納税者)のコンセンサスによって置き換えられる日が、一刻も早く訪れることを期待したい。 ところで、利用者の負担額は、どの程度が妥当であろうか。この点についても、これまで述べてきた、国の基準を越える水準のものを享受する利益について利用者に応分の負担を求める、という立場に即して考えるべきであろう。 この観点から該当する経費を試算すると、夜間及び休日等における開館、温水プールやサウナの常時稼動、ジムナジアム等の冬季暖房、充実した機器と適切な 指導体制を備えたトレーニング室の運営、専門家によるスポーツ相談その他、ほぼ3,800万円(上記運営経費総額の約2分の1)に達する。 もっとも、われわれは、これを全額、利用者の負担とするのが適当とは考えない。こうした高水準のスポーツ施設が望ましいというのが、そもそも大学の判断 に出たものであるし、また、記念建造物の運営費の一部に充てるべく記念募金から留保された「委任経理金」からの補充も期待できるからである。 こうしてわれわれは、上記3,800万円の約半額(1,800万円ないし2,000万円程度)の負担を利用者に求めることが適当である、と考える。むろ ん、この数字を基準にするとしても、利用者数・利用頻度の予測が困難であるため、現段階では個々の利用者の負担額を算定することは容易ではないが、当面、 われわれの提案は以下のとおりである。 ?利用者から1回ごとに200円の運営費を徴収する。 ?恒常的利用者のため、半年有効の割引券(パスカード)を3,000円、1年有効のものを5,000円で発行する。 ?団体等による独占的利用については、別に特別運営費を徴収する。 ?東京大学の学生・教職員以外の利用者については、別に定めるところによる。 運動会に対する協力依頼について 記念館の管理運営に関しては、東京大学が責任を負うことはいうまでもないが、同館の運営上、上述のような、現状では大学として実施困難なサービスを提供 し、ないしはそのための条件を整えること(必要は要員及び経費の確保を含む)について、東京大学運動会(財団法人)に協力を依頼するのが適当と考える。 周知のように、運動会はその目的(「体育及び運動の進歩普及を図り且つ汎く一般学生の心身を錬磨する」)において記念館の設置目的と重なるところが大き く、原則として学生全員を会員とするほか、多数教職員等も加入する団体であって、その構成員は記念館の利用者とほぼ共通している。 運動会はまた、学内体育保健施設の運営に積極的に協力してきた実績があり、法人格をもつ団体として、その収支決算等の適正処理を期待しうる団体でもあ る。さらにまた、運動会は記念館の建設主体である創立百年記念事業後援会の募金活動に積極的に協力し、記念館の建設、運営方法の検討等についても必要な協 力を惜しまれなかった。 われわれは、この運動会に対して、東京大学が定める記念館の管理運営の基本方針のもとに、東京大学と協力して、記念館が高水準の総合的スポーツセンター として、利用者の便宜のため、十全に機能しうるよう、上記趣旨での協力をしていただくことをお願いしたいと考えている。 |